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2004年10月号
心のかたち
(先日あるエッセーを読んでいて、涙もろい私はすぐ泣いてしまいました。そのエッセーをここで紹介したいと思います。)
寒い日だった。横浜を歩いていたら、JRの駅に降りる階段口で、下半身裸で素足の男性が、上に汚れたコートをかぶり、しゃがみこんで寒さに震えていた。髪は腰まであり、相当長い間洗ったこともないように見えた。周囲は、人間が本来持つからだの匂いで覆われていた。一瞬たじろいだが、通り過ぎた。が、どうしても、うしろ髪を引かれた。
以前、朝の満員電車の中で、同じような、人間の独特の匂いがしたことがある。ふと見ると、野宿者と思われる人が座っていた。周囲の人は、真冬だったにもかかわらず、窓を開けた。きつい風が吹き込み、薄着の彼は震えながらうつらうつらしていた。おそらく、昨夜はどこかで寒さをしのぎ、暖かい電車に乗ってやっと眠りについたのだろう。私は、自分の首に巻いていたマフラーを、その人の首に巻いてあげるかどうか迷った。そのマフラーは、母が、何日もかけて編んでくれたものだったからだ。迷いながら、駅に降りた。そしてそのことが、ずっと心に残っていた。私は、下半身裸の男性のところに戻った。着ていたトレンチコートを脱いで、丸くなっていた彼にそっとかけた。その男性は、ぎょっとして震えながら私を見た。彼は私を怖がっていた。
おそらく、多くの人が彼にひどいことをしてきたのだろう。「大丈夫。怖くないからね」彼は、たたかれると思ったのか、丸めていたからだをさらに小さくした。真っ白のトレンチコートと汚れた髪が、なんともいえないコントラストとなって目に入ってきた。次の仕事場に急いだが、歩きながら体が凍った。寒い。歯がガチガチいう。たった一枚のコートがなくなっただけで、首や足から入り込んだ寒さが体の芯まで吹き抜けるような感じがした。三本目の仕事現場に移動する途中、店頭のワゴンにあった赤のブランケットが目に入った。一枚1000円。気がついたときはレジの前で財布を開けていた。「お客さまは本当にお目が高い。これは掘り出し物ですよ」店員さんが笑顔で話しかけてくる。ブランケットをからだに巻くと、なんとも温かい。ホッとした。そして、「わたしには、買えるだけのお金がある…」そう考えると、涙が出てきた。
あそこで震えていたのは、わたしの「良心」だった。それをコート一枚で覆い隠し、ある種の自己満足を得たが、それで彼が救われたわけではない。汚れたからだと震えている姿は、まぎれもなく、見て見ぬふりをしてきたわたしの心の姿だった。
このエッセーを読んだ直後あるメーリングリストに次のハディースがのっていました。
シャリーフ・アル=ハドラミーによると、預言者は言われた、「イスラームは変わり者として始まったが、始まったと同様にいずれ変わり者に戻るであろう。
審判の日、変わり者たちに祝福あれ。」「それらは誰のことですか、アッラーの御使いよ」と尋ねられて、「それは人々が悪をなす時に、善をなした者たちである。」と言われた、それから続けて言われた、「ある信仰者に変わったところがあり、ある信仰者が変わり者として死に、彼の死に泣く者がいなければ、必ずや天と地の民が彼のために泣くであろう。」それから、アッラーの御使いは読まれた、『天と地も彼らのためには泣かず・・・』。そして、言われた、「それらは不信仰者に対しては泣かないではないか」。
うえのエッセーを書いた方は周りから見れば変わり者と思われるかもしれません。ですがアッラーの目には「人々が悪をなす時に、善をなした者たち」なのではと感じました。
そんな人間になりたいものだわ。。となるのは難しいくせにそうなりたくなった私でした。アッラーが助けてくださるのを祈るばかりです。

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