2008年3月号 

国家の長に送った手紙



預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)はさまざまな地域に教友を派遣する一方で、国家の長に手紙を送られ、彼らを真実に教えへと招かれたのである。これも、布教の一つの形である。


ナジャーシ


ナジャーシはエチオピアの皇帝であった。預言者ムハンマドを見ることはなかったので教友のうちには数えられないが、とても偉大な人物であった。ナジャーシに送られた手紙で、預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)は次のように書いておられる。
「アッラーの使徒ムハンマドより、エチオピア皇帝ナジャーシへ。


あなたに平安を!私はあなたの力によって、王であり、神聖であり、信頼され、何もかもお知りになるアッラーに感謝を捧げます。そして、イーサーが、アッラーが純潔で輝かしい処女マリヤムにもたらされた御言葉であることを証言します。あなたを他に配するもののないアッラーにお招きします」


預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)はまず、ナジャーシに「あなたに平安を」と呼びかけることによって、彼に何かが起こることを知っていると示されている。あたかも、彼の入信を前もって知って、そのように書かれているようである。それから、用いられている表現は驚くべきものである。預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)は問題の核心に触れる際、ナジャーシにとって非常に重要な存在である聖マリヤムから始めている。我々にとってもマルヤムは重要な存在であるが。


注意されるべき重要な点は、ナジャーシがキリスト教徒であったということである。預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)は彼に送られた手紙で、聖クルアーンにおける、それに関わる節を書かれている。これは、ナジャーシの心に呼びかけるためには最も効果的で安全な手段であり、結果としてもそうなったのである。


ナジャーシは手紙を受け取るために玉座からおり、それにキスをして、自分の頭に触れさせた。そして手紙を読み終えるや否や、招きに応じてムスリムとなることを明らかにし、すぐに次のような手紙を書いたのであった。


「アッラーの使徒ムハンマドへ、エチオピア皇帝ナジャーシより。


私はあなたがアッラーの使徒であることを証言します。もし命じられるならば私はすぐにあなたの元に参ります。私は私に対してのみ支配者で、人々を支配する者ではありません。あなたの言うことが全て正しいことをも証言します。」


ナジャーシは信仰の意識をもった人物であった。ある時親しい者にこのように言った。「皇帝である代わりに、預言者ムハンマドの召使いだったらどれほど良かっただろう」


それから時間が過ぎ、ある時預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)は礼拝所へ来られ、そこにいる者たちに「立ってください」と言われた。「我々の兄弟であるナジャーシの、葬儀の礼拝をしましょう」


学者たちの間で、このような遠方での葬儀の礼拝についての見解はさまざまである。ここではそれについて詳しく述べることはしない。



ヘラクレイオス


預言者ムハンマドは、二つめの手紙をディイェツール・ケルビーによってローマ皇帝ヘラクレイオスに送られた。手紙には次のようなことが書かれていた。


「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。


アッラーの使徒ムハンマドより、ローマ皇帝ヘラクレイオスへ。アッラーの平安が従う者たちの上にありますように。私はあなたをイスラームへと招待します。ムスリムとなって平安を得てください。そうすればアッラーはあなたの善行を二倍とされるでしょう。もし顔をそむけるのであれば、あなたに従って顔をそむけた者たちの責任もあなたに問われるでしょう。


『啓典の民よ、私たちとあなた方との間の共通のことば(の下)に来なさい。私たちはアッラーにだけ仕え、何ものをもかれに列しない。また私たちはアッラーを差し置いて、外のものを主として崇ない』それでもし、彼らが背き去るならば、言ってやるがいい。『私たちはムスリムであることを証言する』(イムラーン家族章3/64)」


これらの言葉はヘラクレイオスに影響を与えた。当時、彼のそばにはアブー・フスヤーンがいた。そして、皇帝とアブー・フスヤーンとの間に次のような問答が交わされた。


「この者の血筋はどうか?」
「伝統ある、由緒正しい血筋の者です」
「祖先の中に、このようなことを言った者はいたか?」
「いいえ、いません」
「祖先に支配者であったものはいたか?」
「いいえ、いません」
「この者に従っているのは、力のない層か、有力者層か」
「多くは力のない層です」
「信者たちは増えていっているか、減ってきているか」
「日を追うごとに増えています」
「この者は、嘘をついたことはあるか?」
「いいえ、嘘をつたところを見たことはありません」
「約束を守らなかったことは?」
「今までのところありません。しかし今後についてはわかりません」


アブー・フスヤーンは当時、まだムスリムではなく、しかも預言者ムハンマド(彼に祝福と平安あれ)の無慈悲な敵であったにも関らず、その時の会話ではこの最後の文程度の疑いを吹き込むことしかできなかったのである。


そしてヘラクレイオスは、アブー・フスヤーンの返事を繰り返しつつ、それらの全てが預言者である印であることを述べ、相談役を呼んで彼にも尋ねた。彼も同じことを答えた。そして信仰を明らかにし「近い将来、今私の足の下にあるこの土地は全て彼のものになるだろう」と言った。そしてこれは実現したのである。


しかし、神父たちが激しく反対したために、ヘラクレイオスは言葉を変えた。「私はあなた方を試したのだ。あなた方の教えにどれほど忠実であるかを見ようと」と言った。ただ、この相談役は信仰を持ち、預言者ムハンマドに遠方から従った。


 


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