2004年12月号 

「翼のない天使」 Wide Awake

 

11月も半ば過ぎると、街はほとんどがクリスマスに向けたイルミネーションや飾り付けで覆われ、だいぶ「年末」だな、という気分になってきます。それとともに、年内にやらねばならないことを思い出してあせったり、年賀状を書かねばと思ったり、私の場合は学生ですので、論文の締め切りが近い!と冷や汗がでたり、ばたばたとしてしまいます。12月を「師走」とはよく言ったもので、なんとなく忙しく12月を迎え、なんとなく忙しく1ヶ月が終わっちゃうのかな、と感じます。そんな時期ですから、ゆっくりと今年一年を振り返ったり、自分の生活や心について考えたりする時間はあまりありません。そういうときこそ、2時間なら2時間という決まった時間他の事を考えずにテレビの前に座ってひとつの話をじっくり見て、見終わった後自分や周りについて想いをめぐらすことの出来る映画、というのはすばらしいものなのかもしれないな、と思います(もちろん私としては映画館のスクリーンで見る映画の方がいいですが、映画館は自分の都合にあわせて上映してはくれません…)。人によって映画の好みはさまざまで、シリアスな映画はいやだわ、という人もいるとは思いますが、今月紹介させていただく映画『翼のない天使』はシリアスさとコミカルさが混じった、映像もきれいで考えさせられる大変素敵な話だと思います。


カトリックの男子小学校5年生のジョシュアは、おじいちゃんが大好きでした。ですがいつも一緒だったそのおじいちゃんが亡くなり、彼は不安になります。「おじいちゃんは天国に行けたんだろうか?」−お父さんやお母さんや学校の先生に聞いてもちゃんとした答えは返ってきません。その答えを探すために、ジョシュアはたった一人で神様を探すことを決意します。「神様をみつけたら、おじいちゃんはどうしているのか聞くんだ」―そのために彼は、さまざまな宗教の話を聞いたり、まねをしてみたりします。その過程で様々なものを見、得て行くジョシュアですが、神様は果たしてみつかったのでしょうか…。


この映画はカトリックの学校を中心に展開するため、基本はキリスト教を中心とした思想で描かれていますが他の宗教にも偏見が少なく、子供たちの聖書への疑問にもわかりやすい形で答えようという姿勢がよく見えます。ジョシュアの神様探しの旅においても、先生たちは真剣に話を聞いてくれます。ただ、そういう環境であっても、大人たちには神様を探すというのは「おかしなこと」と思われてしまいます。子供であれば、特に人種や宗教がさまざまな人たちがいる環境にあっては、「神様はどこにいるの?」「死んだ人はどうなるの?」という問いは全くおかしくないものだと思います。そしてカトリックの学校ですから、神を探すという行為は奨励されてもいいとも思うのですが、そうはいきません。「信仰」というものが「宗教上のルールを遵守するもの」になってしまっているのか、なかなかジョシュアの気持ちを理解できないのです。

 

確かにルールはありますが、その意味を自分できちんと知ることによってより深く物事が理解できるのではないでしょうか。子供は純粋に疑問を持ち、その答えを模索していける、というところでやはり素晴らしいものだと思います。ですが、そういった子供の純粋さに対し、きちんと接していけるのか、きちんと信仰とはどういうものかについて教えることが出来るのかとなると、私にはさっぱり自信がありません(幸か不幸か、まだそのような状況にはないのですが)。ですが、ジョシュアの持つ「子供らしい」疑問の数々は実は、ムスリムでない人からイスラームについて聞かれるときのものと大変似ているようにも思います。そうなると、子供がいる・いないは関係なく、自分の事としても考えないといけないな、どうすればいいんだろう?と思ってしまうのです。まったく、おちおち映画も見ていられません。


この映画はネタばらし禁止の映画なので、あまり内容について詳しいことは書けませんが、この映画の監督は『シックス・センス』『サイン』などのM・ナイト・シャマランで、これは彼の初監督作品です。以前私は『サイン』についてレヴューをしましたが、そこにも通じる、思想に一本芯の通った監督だと思います。監督が最終的に何を言いたいのか?という事をよく考えながら、また、他の映画を見たことがある人なら共通点を探しつつ見るのもいいと思います。キーワードは「偶然=奇跡≒サイン」でしょうか…。それと、Wide Awakeという原題も、大きな鍵になっている事は間違いないでしょう。宗教が違うということや「天国に行けた」かどうかという表現を問題にするのではなく、とにかく見ていただきたい映画だと思います。


私の友人でも「クリスマス」というと「キリスト教でもないのに日本人は浮かれて!」と言う方も多い時期ですが、そういう時だからこそ逆に、宗教とは何か、信仰とは何か、人生とは何か…ということを考えて、大切な人たちと話し合ってみるのもいいのではないでしょうか。


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『翼のない天使』 1998年 アメリカ 87分 (日本未公開…ビデオやDVDで出ています)
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ジョセフ・クロス(ジョシュア)/ロージー・オドネル(シスター・テリー)/ロバート・ロッジア(おじいちゃん)他              


 


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